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I LOVE : Axwell Λ Ingrosso | Steve Angello | Avicii | Alesso | Nicky Romero | Otto Knows | Third Party | SIZE | Axtone | Refune | Buce Records and more

「そう、キミもそれでいいのだ」-The Chainsmokers & Coldplay - Something Just Like This (Alesso Remix)-

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 誰が風を吹かせ、雨を降らせているのだろうか。天地である。天地ですら永く続けることはできない。人間ならば尚更だ。(老子)

 自分がティーンネージャーの頃に愛したバンドの一つに「Oasis」というバンドある。もちろんご存知の方も多いだろうが、僕は彼等の1stアルバム「Definitely Maybe」と2ndアルバム「Morning Glory」が大好きだ。いとも簡単に容易に人の心を鷲掴み、高揚と至福を与えてくれるこの二枚は、僕の中で価値観を覆されたという意味でも人生においても重要なマスターピースの二枚だ。だが、「Oasis」がそれ以降、あくまで僕の中でこの二枚の感動を超えるアルバムをリリースしたのかと言われると、僕は首を横に振ってしまう。

 もちろん好みもある。そして、感動という思い出の補正も働くのだろう。もしくは、安易にそれを超えたと認めたくないという変な意地もあるのかも知れない。でも、どこかその感動を超えるのではないかと無意味な希望を抱いて、僕は彼等を追い続けてしまう。愚かな事かも知れない。でも、それもまた愛というものの性だ。

 

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 Alessoにも僕は、それに似たものを感じる時がある。アルバムではないが、彼にも「Calling」というアンセムがあって、問答無用の「If I Lose My Self (Alesso Remix)」もある。彼がスターダムへと昇り詰めていく中で産み落とされこの楽曲達は、深く鮮明に、そして美しく僕達の心に未だしっかりと刻み付けられている。

    だから、僕達は彼にはさらなる高みを望んでしまう。だが、前途したようにそれは客観的にも主観的にもそれは余りに高い壁なのだ。そして、人は変わり続ける生き物で、ずっと同じ場所にいることはできない。故に、それに伴う違和感も作り手と聞き手の中に生まれてくる。これもまた性なのかも知れない。

    だが、僕はそれでいいではないかと思う。未来彼が進む方向と僕等が望む方向が完全に異なったとしても曲は消えないし、僕達のあの日の感動は消える事はないだろう。仮に超えられられないとしても彼は「Heros」を産み落としてきたし、今回の「Something Just Like This」のRemixを産み落とした。

    だから、それでいいのだ。Axwell Λ IngrossoがSwedish House Mafiaの幻影を背負うように、彼もまたそれに似た十字架を背負っている。それでも定期的にこの様な至福のメロディを届けてくれる彼に僕は心から感謝をしたい。

 Text by U

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「Almost Human」という物語の幕が上がった日

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 暗闇の中、神秘的で厳かなメロディが鳴り響き始める。

 ステージセットは、いたってシンプルだ。四方に映るビジョンの上に置かれたDJセット。そして、後ろに聳える巨大なスクリーン。無駄な脚色を排除し簡素化されたそのステージセットは、まるで何かの儀式かのようにすら見えた。

 Coachella 2017。Shara Stage。Steve Angello。

 ここで今から一体何が起こるのだろうか?一体何が繰り広げられるのだろうか?

 Steve Angelloは、今日までこのCoachellaに向けて、SNS上で意味深なワードと画像の投稿を繰り返した。それに呼応するように彼のレーベル「Size Records」のTwitterアカウントは「I Will Rejoice!」と彼に返信を重ねていく。それはまるで推理小説のように僕達の思考を巡らせては、Coachellに向けた関心を否が応でも高めさせた。そして彼が、先日突如公開したMovie「Almost Human」の正体は一体何を指しているのか?アルバムタイトルなのか?それともこれから始まるプロジェクト名なのか?現時点ではまだ何も解らない。ただ、疑いなく確信している事は、これまでの彼のセットとは180度全く違うものになるという事。そして、彼が掲げた「Almost Human」の正体が何なのか、今日のステージで少し垣間見えてくるのかも知れない。

     僕は高まる鼓動を抑え、パソコンの画面を食い入るように見つめた。

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 高らかに捲くし立てるスピーチが会場内に響き渡る中、白い光と白い煙に包まれるようにライダースジャケットを羽織り、「Almost Human」のロゴTシャツを着たSteve Angelloが登場した。

    Steve Angelloは右手を胸に当て、スピーチに合わせ口を動かしている。そのスピーチ中に度々聞こえてくる「I Will Rejoice」という言葉。これは前途した「Size Records」がAngelloに返信していた言葉だ。気になって調べてみると、どうやらアメリカの牧師であり、映画監督でもある「T.D Jakes」の「Free Your Soul」というスピーチのようだ。慈善事業とのつながりを通じ、苦しみに対する慈悲深い心の苦しみの心と、抑圧された人と解放された人に対するエンパワーメントを語るこのスピーチは、聖書にある「Rejoice in the Lord always! Again I will say, “ Rejoice! ”」が恐らくベースになっているのだろうか。

 さながら会場が、もはや教会の聖餐式のような空気に包まれていく中、「Free Your Soul」が終わり暗転すると、聞き覚えのビートが耳に入ってくる。すると、Steve Angelloがマイクを握り、暗闇の中から現れる。「Coachella!!!」と叫び、いつもの挨拶を終えると、ビートのテンポがだんだんと上がり、次の曲がクラウドの歓声と共に迎えられた。「Knas」だ。そして「SLVR(Sweet Dreamsとのマッシュアップ)」「Follow Me(Show Me Loveとのマッシュアップ)」が会場に放たれていくと、このヒットトラックの応酬にクラウドは、全力で応えるように手を上げ、飛び跳ねる。このステージを見に来ていた明日出演予定のMartin Garrixもカメラに抜かれ、大喜びで飛び跳ねている。

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 だが、異様な空気は完全には消えず、会場内にまだ滞留しているような気がした。それがさらに顕著になっててきたのは、未発表曲(Last Danceとのマッシュアップ)からお馴染みの「Rebel Nation」へと続き「Rave n' Roll」そして、未発表曲が流れ始めてからだ。ミニマルな曲調が会場の狂騒を吸い込み、簡素的なビートが絶え間なく連なり、まるで、キングコブラのようにまだ名を持たぬ曲達が僕達の感情が毒されていくようだった。だが、そんな次に聞こえてきたのは彼の1stアルバム「Wild Youth」のハイライトトラックの一つである「Someone Elese」だ。地球の奥底に眠るマグマが、爆発するように僕の野性が暴れ出す。自分の望む場所を探し、戸惑うこのトラックは、もしかしたら「Wild Youth」から発せられていた「Almost Human」への布石だったのかも知れないとふと思ってしまう。

 ここからはもう圧巻の展開だった。「Queen」の「We Will Rock You」のクラップに導かれながら畳みかけられる「Children Of The Wild」と「Remember」の壮大な世界観の連発。さらに立て続けに襲い掛かってくる曲が「Payback(Wasted Loveとのマッシュアップ)」。僕は精神をここではないどこかへと吹き飛ばされてしまいそうになった。

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 そして、再び暗転後、聞き覚えの無いイントロが奏でられ始める。どうやら未発表曲「Break Me Down 」という曲のようだ。ボーカルのメロディが更なる高揚へと誘い、僕の心臓の心拍数を上げていく。高鳴りは止まらない。The Oceanのアカペラに乗せられた未発表曲がそれを加速させていく。僕はあまりの情報量の多さに少し混乱気味になってしまいそうだった。

 そして、Steve AngelloはMCを挟み、最後の曲を披露する。

 トラックナンバーは、これもまた未発表曲「Feels Like Heaven」という曲。

 歌声を聴く限り恐らくボーカルは「The Killers」のBrandon Flowersだ。救いを求めるその想いが浄化し、空へと昇っていくようなメロディが、会場を満たしていく。

 すると、Steve Angelloは空へと向かい羽根を広げていく。そして、会場に渦巻く全ての感情を許し、全てを受け止めるように手を広げ、クラウド達を見つめている。そして、彼は曲が終わりに近づくにつれ、ゆっくりと地上へと舞い降り、白い煙に包まれながら消えていった。

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 この日のステージをどう捉えるべきなのだろう?僕は見終わって色々と考えを巡らせみた。ここからは僕の推論だ。

 間違いなく彼は完全に独自の航路へと舵を切っている。だが、それは「音楽的に」という観点ではない。正直音楽的に特出的に先鋭的かと言うと正直そうでもないように感じたし、今まで観た事のないSteve Angelloのセットである事には変わりはないが、お馴染みのトラックもしっかりにプレイしていたし、途中のミニマルな展開もDeadmau5などとそう違いがあるように感じない。だが、それはあくまで「音楽的に」という意味合いでだ。今日の彼の独自の航路を決定ずけているのは間違いなく「音楽的」という観点ではなく「思想的」という観点においてだと思う。

 オープニングの「T.D Jakes」によるスピーチ。彼は牧師である。つまりこれは、特定の宗教家の思想を世界的な音楽フェスティバルにおいて引用し、打ち出したという事であり、それがどれだけ独創的な英断であるかを冷静に考えると少し恐ろしくなる。そして最後の「Feels Like Heaven」という曲、そして演出。あの演出は、思わず十字架を背負ったイエス・キリストを連想させたし、曲調もどこか讃美歌ような展開だった。だから、どうしても宗教色を強く帯びた印象が拭えない。それはまるで自ら「Yeezus」と呼んだKanye Westに近い精神性を感じてしまったし、もしかしたらアルバム「Wild Youth」のラストで彼が読み上げた心情の具現化が「Almost Human」であるのだろうか?とも思えたし、彼の掲げる「Almost Human」とは「神」というメタファー的な意味合いなのだろうか?とも思えてくる。ただ、どうやら「天国」という言葉がキーワードになりそうな予感はしている(ちなみに下の画像の「PARADISCO」もラテン語で天国を指す言葉だ)。だからこれは、彼が俗にいうブレる、ブレない、変わる、変わったなどの次元の話ではないような気がしてならない。音楽的観点のみでそれを判断する事はもはや不可能で、あくまで彼は自身の音楽を支点として、僕達に何かメッセージを発信しようとしているのではないだろうか?

    推測は止まらないが、結論づけるにはまだ早すぎる。今日のこの日のステージから感じられるものは恐らく映画の予告編のようなまだ断片的なものである筈だ。今日行われたCoachellaの第2週目ではまた新たに新曲も披露されたと情報が入っているし、今この瞬間も「Almost Human」という得体の知れない物語は着実に進行している。

  赤いカーテンは開き、「Almost Human」という物語の幕は上がった。Steve Angelloはこれから僕達に何を投げかける?僕は物語が完結するまで追うつもりだ。

    Text by U

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Third Party :「HOPE」 Review "希望という名の功績と誇り"

 

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 希望は、それを求める気の毒な人を決して見捨てはしない。

 ジョン・フレッチャー(イギリス劇作家/1579~1625)

 今年2月にリリースされたイギリス出身のDJ/プロデューサー二人組「Third Party」の1stアルバム「HOPE」。先日このアルバムを通して聴いていて、ふと思う事が湧いてきたので、ここで書き記せたらと思う。まず、スタンス的に言うと僕自身、リリース前からこのアルバム「HOPE」のリリースに関して、あまり好意的ではなく、というより、もはや疑問的だった。何故なら僕が、今の時代アルバムというものに関しての存在意義をあまり見いだせなくなってきているのが一つ理由だ。インターネットの登場から様々なサービスが生まれ、発展してきた今、僕達は色んな情報が簡単に手に入るようになった。確かに、便利な側面もあるが、その反面情報の多量さに消費のスピードが随分と上がった気がする。それは音楽も同様で、それこそSNS上のタイムラインの如く、毎日何時間何分の間に沢山の曲の情報を知ることが出来るようになったが、多くの人が一つの曲に対して向き合う時間が明らかに減ったように感じる事がある。もちろん全ての人がそうではないだろう。そして、その必要性もない。だが、情報の渦は秒単位で僕達に迫ってくる。どんどん曲が紹介され、どんどんそれを聴くことを迫られるような妙な切迫感に襲われる。だから、僕達はどんどん聞いて、どんどん消化していかなければならない連鎖の中に巻き込まれてしまう。これは多様化による一種の苦行であり、罠だ。一曲と一枚のアルバムが同様に消化される。そして、それがただでさえ排他の早いクラブミュージックなのだから、余計にでも尚更そう感じずにはいられなかったりする。

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 しかし、それが今の時代である。否定した所で何も変わらないし、それに移り変わりのさらに早い今の時代だ。それに一喜一憂してられないのかも知れないが、少なからず今のこの流れの中で果たしてどれだけ一枚のアルバムとしっかり向き合えるのか、その猶予をこの時代は与えてくれるのだろうか。しかも、このアルバムの大半は、既にリリース済みの曲で占められ、真新しさというという点においても、多少鮮度に欠けてしまうような気がする。確かに、「Without You」「Guiding Light」「Get Back」「Hurt」は良曲ではあるが、アルバム一枚としては新しい発見や興奮が見つからず、聴いていて何だか物足りない感覚も正直生まれてくる。そうでなくても未発表曲がプレイされればすぐ撮影、録音され、ネット上に瞬く間に広がるのだ。つまり散々シーン追いかけてきた人達や彼等のファンにとっては、アーティスト側が正式にパッケージングした一枚に、ほぼ新たな発見など求めるの事がおかしいのかも知れない。

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 では、この「HOPE」は聞く価値がないのか? 

 いや、そんな事は決してない。この「HOPE」に収録されている曲達は、昨今の彼等の偉大な足跡であり、多くのDJ達に既に愛されてきた曲達だ。Steve AngelloのDJセットでも随分と聴いてきた方々もいるだろうし、沢山のPodcast、DJセットで耳にした方も多いだろう。例え新鮮味が薄いものだとしても、その足跡を僕達が愛している事には変わりはないし、その足跡共にThird Partyも僕達も今日まで生きてきた。つまり、このアルバムは、従来のアルバムのようにアーティスト側が新たな道を提示し、その道へ進む事を宣言してきた事とは違うアプローチなのだと思う。このアルバム「HOPE」は、これまで彼等が昨今、歩みを進めてきた音楽という名の冒険の功績と誇りの旅路の一区切りなのだ。それに彼等はきっと「HOPE」と名付けのだと思う。だから僕達は、彼等の歩んだ旅路を改めて振り返るべきタイミングなのかも知れない。前途したような時代だ。曲はあっという間に消化され、聴き捨てられていく。だが、過去を消し去らず、それを思い出として残すことは可能な筈だ。「HOPE」に収録されている曲達は、彼等の音楽を愛する人々にとっては疑いなくその価値がある音楽である筈なのだ。

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 五月にはとうとう待望の初来日も控えている。果たしてThird Partyは、これからの新たな旅路に今度はなんと名前をつけるのだろうか?これからまた彼等と足跡を共にしながら、生きていく日々が始まろうとしている。だが、時は無常だ。未来に幸せな結末待っている保証はない。望む理想は誰しもが手に入れらないものなのかも知れない。だが、彼等の積み重ねた「HOPE」は、それを求める気の毒な人を決して見捨てはしないと、僕は信じている。

Text by U

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