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Third Party :「HOPE」 Review "希望という名の功績と誇り"

 

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 希望は、それを求める気の毒な人を決して見捨てはしない。

 ジョン・フレッチャー(イギリス劇作家/1579~1625)

 今年2月にリリースされたイギリス出身のDJ/プロデューサー二人組「Third Party」の1stアルバム「HOPE」。先日このアルバムを通して聴いていて、ふと思う事が湧いてきたので、ここで書き記せたらと思う。まず、スタンス的に言うと僕自身、リリース前からこのアルバム「HOPE」のリリースに関して、あまり好意的ではなく、というより、もはや疑問的だった。何故なら僕が、今の時代アルバムというものに関しての存在意義をあまり見いだせなくなってきているのが一つ理由だ。インターネットの登場から様々なサービスが生まれ、発展してきた今、僕達は色んな情報が簡単に手に入るようになった。確かに、便利な側面もあるが、その反面情報の多量さに消費のスピードが随分と上がった気がする。それは音楽も同様で、それこそSNS上のタイムラインの如く、毎日何時間何分の間に沢山の曲の情報を知ることが出来るようになったが、多くの人が一つの曲に対して向き合う時間が明らかに減ったように感じる事がある。もちろん全ての人がそうではないだろう。そして、その必要性もない。だが、情報の渦は秒単位で僕達に迫ってくる。どんどん曲が紹介され、どんどんそれを聴くことを迫られるような妙な切迫感に襲われる。だから、僕達はどんどん聞いて、どんどん消化していかなければならない連鎖の中に巻き込まれてしまう。これは多様化による一種の苦行であり、罠だ。一曲と一枚のアルバムが同様に消化される。そして、それがただでさえ排他の早いクラブミュージックなのだから、余計にでも尚更そう感じずにはいられなかったりする。

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 しかし、それが今の時代である。否定した所で何も変わらないし、それに移り変わりのさらに早い今の時代だ。それに一喜一憂してられないのかも知れないが、少なからず今のこの流れの中で果たしてどれだけ一枚のアルバムとしっかり向き合えるのか、その猶予をこの時代は与えてくれるのだろうか。しかも、このアルバムの大半は、既にリリース済みの曲で占められ、真新しさというという点においても、多少鮮度に欠けてしまうような気がする。確かに、「Without You」「Guiding Light」「Get Back」「Hurt」は良曲ではあるが、アルバム一枚としては新しい発見や興奮が見つからず、聴いていて何だか物足りない感覚も正直生まれてくる。そうでなくても未発表曲がプレイされればすぐ撮影、録音され、ネット上に瞬く間に広がるのだ。つまり散々シーン追いかけてきた人達や彼等のファンにとっては、アーティスト側が正式にパッケージングした一枚に、ほぼ新たな発見など求めるの事がおかしいのかも知れない。

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 では、この「HOPE」は聞く価値がないのか? 

 いや、そんな事は決してない。この「HOPE」に収録されている曲達は、昨今の彼等の偉大な足跡であり、多くのDJ達に既に愛されてきた曲達だ。Steve AngelloのDJセットでも随分と聴いてきた方々もいるだろうし、沢山のPodcast、DJセットで耳にした方も多いだろう。例え新鮮味が薄いものだとしても、その足跡を僕達が愛している事には変わりはないし、その足跡共にThird Partyも僕達も今日まで生きてきた。つまり、このアルバムは、従来のアルバムのようにアーティスト側が新たな道を提示し、その道へ進む事を宣言してきた事とは違うアプローチなのだと思う。このアルバム「HOPE」は、これまで彼等が昨今、歩みを進めてきた音楽という名の冒険の功績と誇りの旅路の一区切りなのだ。それに彼等はきっと「HOPE」と名付けのだと思う。だから僕達は、彼等の歩んだ旅路を改めて振り返るべきタイミングなのかも知れない。前途したような時代だ。曲はあっという間に消化され、聴き捨てられていく。だが、過去を消し去らず、それを思い出として残すことは可能な筈だ。「HOPE」に収録されている曲達は、彼等の音楽を愛する人々にとっては疑いなくその価値がある音楽である筈なのだ。

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 五月にはとうとう待望の初来日も控えている。果たしてThird Partyは、これからの新たな旅路に今度はなんと名前をつけるのだろうか?これからまた彼等と足跡を共にしながら、生きていく日々が始まろうとしている。だが、時は無常だ。未来に幸せな結末待っている保証はない。望む理想は誰しもが手に入れらないものなのかも知れない。だが、彼等の積み重ねた「HOPE」は、それを求める気の毒な人を決して見捨てはしないと、僕は信じている。

Text by U

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