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I LOVE : Axwell Λ Ingrosso | Steve Angello | Avicii | Alesso | Nicky Romero | Otto Knows | Third Party | SIZE | Axtone | Refune | Buce Records and more

「Almost Human」という物語の幕が上がった日

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 暗闇の中、神秘的で厳かなメロディが鳴り響き始める。

 ステージセットは、いたってシンプルだ。四方に映るビジョンの上に置かれたDJセット。そして、後ろに聳える巨大なスクリーン。無駄な脚色を排除し簡素化されたそのステージセットは、まるで何かの儀式かのようにすら見えた。

 Coachella 2017。Shara Stage。Steve Angello。

 ここで今から一体何が起こるのだろうか?一体何が繰り広げられるのだろうか?

 Steve Angelloは、今日までこのCoachellaに向けて、SNS上で意味深なワードと画像の投稿を繰り返した。それに呼応するように彼のレーベル「Size Records」のTwitterアカウントは「I Will Rejoice!」と彼に返信を重ねていく。それはまるで推理小説のように僕達の思考を巡らせては、Coachellに向けた関心を否が応でも高めさせた。そして彼が、先日突如公開したMovie「Almost Human」の正体は一体何を指しているのか?アルバムタイトルなのか?それともこれから始まるプロジェクト名なのか?現時点ではまだ何も解らない。ただ、疑いなく確信している事は、これまでの彼のセットとは180度全く違うものになるという事。そして、彼が掲げた「Almost Human」の正体が何なのか、今日のステージで少し垣間見えてくるのかも知れない。

     僕は高まる鼓動を抑え、パソコンの画面を食い入るように見つめた。

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 高らかに捲くし立てるスピーチが会場内に響き渡る中、白い光と白い煙に包まれるようにライダースジャケットを羽織り、「Almost Human」のロゴTシャツを着たSteve Angelloが登場した。

    Steve Angelloは右手を胸に当て、スピーチに合わせ口を動かしている。そのスピーチ中に度々聞こえてくる「I Will Rejoice」という言葉。これは前途した「Size Records」がAngelloに返信していた言葉だ。気になって調べてみると、どうやらアメリカの牧師であり、映画監督でもある「T.D Jakes」の「Free Your Soul」というスピーチのようだ。慈善事業とのつながりを通じ、苦しみに対する慈悲深い心の苦しみの心と、抑圧された人と解放された人に対するエンパワーメントを語るこのスピーチは、聖書にある「Rejoice in the Lord always! Again I will say, “ Rejoice! ”」が恐らくベースになっているのだろうか。

 さながら会場が、もはや教会の聖餐式のような空気に包まれていく中、「Free Your Soul」が終わり暗転すると、聞き覚えのビートが耳に入ってくる。すると、Steve Angelloがマイクを握り、暗闇の中から現れる。「Coachella!!!」と叫び、いつもの挨拶を終えると、ビートのテンポがだんだんと上がり、次の曲がクラウドの歓声と共に迎えられた。「Knas」だ。そして「SLVR(Sweet Dreamsとのマッシュアップ)」「Follow Me(Show Me Loveとのマッシュアップ)」が会場に放たれていくと、このヒットトラックの応酬にクラウドは、全力で応えるように手を上げ、飛び跳ねる。このステージを見に来ていた明日出演予定のMartin Garrixもカメラに抜かれ、大喜びで飛び跳ねている。

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 だが、異様な空気は完全には消えず、会場内にまだ滞留しているような気がした。それがさらに顕著になっててきたのは、未発表曲(Last Danceとのマッシュアップ)からお馴染みの「Rebel Nation」へと続き「Rave n' Roll」そして、未発表曲が流れ始めてからだ。ミニマルな曲調が会場の狂騒を吸い込み、簡素的なビートが絶え間なく連なり、まるで、キングコブラのようにまだ名を持たぬ曲達が僕達の感情が毒されていくようだった。だが、そんな次に聞こえてきたのは彼の1stアルバム「Wild Youth」のハイライトトラックの一つである「Someone Elese」だ。地球の奥底に眠るマグマが、爆発するように僕の野性が暴れ出す。自分の望む場所を探し、戸惑うこのトラックは、もしかしたら「Wild Youth」から発せられていた「Almost Human」への布石だったのかも知れないとふと思ってしまう。

 ここからはもう圧巻の展開だった。「Queen」の「We Will Rock You」のクラップに導かれながら畳みかけられる「Children Of The Wild」と「Remember」の壮大な世界観の連発。さらに立て続けに襲い掛かってくる曲が「Payback(Wasted Loveとのマッシュアップ)」。僕は精神をここではないどこかへと吹き飛ばされてしまいそうになった。

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 そして、再び暗転後、聞き覚えの無いイントロが奏でられ始める。どうやら未発表曲「Break Me Down 」という曲のようだ。ボーカルのメロディが更なる高揚へと誘い、僕の心臓の心拍数を上げていく。高鳴りは止まらない。The Oceanのアカペラに乗せられた未発表曲がそれを加速させていく。僕はあまりの情報量の多さに少し混乱気味になってしまいそうだった。

 そして、Steve AngelloはMCを挟み、最後の曲を披露する。

 トラックナンバーは、これもまた未発表曲「Feels Like Heaven」という曲。

 歌声を聴く限り恐らくボーカルは「The Killers」のBrandon Flowersだ。救いを求めるその想いが浄化し、空へと昇っていくようなメロディが、会場を満たしていく。

 すると、Steve Angelloは空へと向かい羽根を広げていく。そして、会場に渦巻く全ての感情を許し、全てを受け止めるように手を広げ、クラウド達を見つめている。そして、彼は曲が終わりに近づくにつれ、ゆっくりと地上へと舞い降り、白い煙に包まれながら消えていった。

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 この日のステージをどう捉えるべきなのだろう?僕は見終わって色々と考えを巡らせみた。ここからは僕の推論だ。

 間違いなく彼は完全に独自の航路へと舵を切っている。だが、それは「音楽的に」という観点ではない。正直音楽的に特出的に先鋭的かと言うと正直そうでもないように感じたし、今まで観た事のないSteve Angelloのセットである事には変わりはないが、お馴染みのトラックもしっかりにプレイしていたし、途中のミニマルな展開もDeadmau5などとそう違いがあるように感じない。だが、それはあくまで「音楽的に」という意味合いでだ。今日の彼の独自の航路を決定ずけているのは間違いなく「音楽的」という観点ではなく「思想的」という観点においてだと思う。

 オープニングの「T.D Jakes」によるスピーチ。彼は牧師である。つまりこれは、特定の宗教家の思想を世界的な音楽フェスティバルにおいて引用し、打ち出したという事であり、それがどれだけ独創的な英断であるかを冷静に考えると少し恐ろしくなる。そして最後の「Feels Like Heaven」という曲、そして演出。あの演出は、思わず十字架を背負ったイエス・キリストを連想させたし、曲調もどこか讃美歌ような展開だった。だから、どうしても宗教色を強く帯びた印象が拭えない。それはまるで自ら「Yeezus」と呼んだKanye Westに近い精神性を感じてしまったし、もしかしたらアルバム「Wild Youth」のラストで彼が読み上げた心情の具現化が「Almost Human」であるのだろうか?とも思えたし、彼の掲げる「Almost Human」とは「神」というメタファー的な意味合いなのだろうか?とも思えてくる。ただ、どうやら「天国」という言葉がキーワードになりそうな予感はしている(ちなみに下の画像の「PARADISCO」もラテン語で天国を指す言葉だ)。だからこれは、彼が俗にいうブレる、ブレない、変わる、変わったなどの次元の話ではないような気がしてならない。音楽的観点のみでそれを判断する事はもはや不可能で、あくまで彼は自身の音楽を支点として、僕達に何かメッセージを発信しようとしているのではないだろうか?

    推測は止まらないが、結論づけるにはまだ早すぎる。今日のこの日のステージから感じられるものは恐らく映画の予告編のようなまだ断片的なものである筈だ。今日行われたCoachellaの第2週目ではまた新たに新曲も披露されたと情報が入っているし、今この瞬間も「Almost Human」という得体の知れない物語は着実に進行している。

  赤いカーテンは開き、「Almost Human」という物語の幕は上がった。Steve Angelloはこれから僕達に何を投げかける?僕は物語が完結するまで追うつもりだ。

    Text by U

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